【登辞林】(登記関連用語集)


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囲繞地(いにょうち/いじょうち) (1)民法上、袋地を取り囲んでいる土地。「囲繞地」の言葉は、平成16年民法改正の際、条文上、削除された。
(2)刑法上、住居、建造物等のある、塀や柵等で囲まれた場所。

囲繞地通行権(いにょうちつうこうけん) 袋地、又は、公道に出るのが著しく困難な土地(準袋地)の所有者が公道に出るため、袋地又は準袋地を囲んでいる土地(囲繞地)を通行することが出来る権利。この通行権は袋地又は準袋地の所有権があれば所有権登記を経ていなくても主張することができ、必要があれば、通路を開設することができる。通行の場所及び方法は、囲繞地所有者にとって最も損害が少ないものを選ばなければならず、原則、通行する土地の損害に対し償金を支払わなければならない。分割、又は、土地の所有者がその土地の一部を譲渡したことにより袋地が生じた場合は償金を払う必要がないが、分割又は一部譲渡前の土地のみに通行権が認められる。(→相隣関係

委任 当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することで効力を生じる契約(民法643条)。委任は諾成契約であるが、委任契約の成立にあたっては、委任者が受任者に委任状を交付することが多い。
民法上、委任契約は、無償契約片務契約を原則とするが、報酬を支払う特約がある場合は、有償契約双務契約となる(民法648条1項)。商人がその営業の範囲内で他人のために行為をしたときは、相当の報酬を請求できる(商法512条)。
受任者は、委任事務の処理にあたり、善良な管理者の注意義務を負う(民法644条)。受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物、収取した果実を委任者に引き渡すことを要し、委任者のために自己の名で取得した権利は委任者に移転しなければならない(民法646条)。この場合の不動産登記における受任者から委任者への所有権移転登記の登記原因は、「民法646条2項による移転」とする。
委任は、各当事者がいつでも解除することができるが、当事者の一方が相手方に不利な時期に解除したときは、やむを得ない事情があったときを除き、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない(民法651条)。
民法上、委任は、次に掲げる事由によって終了する(民法653条)。
1.委任者又は受任者の死亡
2.委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
3.受任者が後見開始の審判を受けたこと。
商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては消滅しない(商法506条)。
訴訟代理権は、次に掲げる事由によっては消滅しない(民事訴訟法58条1項)。
1.当事者の死亡又は訴訟能力の喪失
2.当事者である法人の合併による消滅
3.当事者である受託者の信託に関する任務の終了
4.法定代理人の死亡、訴訟能力の喪失又は代理権の消滅若しくは変更
一定の資格を有する者で自己の名で他人のために訴訟の当事者となるものの訴訟代理人の代理権は、当事者の死亡その他の事由による資格の喪失によっては、消滅しない(民事訴訟法58条2項)。
登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない(不動産登記法17条)。
1.本人の死亡
2.本人である法人の合併による消滅
3.本人である受託者の信託に関する任務の終了
4.法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更
株式会社と役員・会計監査人・清算人との関係、委員会設置会社執行役との関係は、委任に関する規定に従うものとされる(会社法330条、402条3項、478条6項)。
登記権利者及び登記義務者双方から登記手続きの委託を受け、当該手続きに必要な書類の交付を受けた司法書士には、当該手続きの完了前に、登記義務者から当該書類の返還を求められても、登記権利者に対しては、同人の同意があるなどの事情が無い限り、その返還を拒むべき委任契約上の義務がある(最高裁判決昭和53年7月10日)。

委任の終了 (1)法律の定める事由により、委任契約が終了すること。民法上の規定の他、商法、民事訴訟法、不動産登記法等に特則が規定されている。(民法653条、商法506条、民事訴訟法58条、不動産登記法17条参照)。
(2)不動産登記における、権利能力のない社団の代表者の名義を変更する際の、所有権移転登記の登記原因。
法人格のない社団(権利能力のない社団)の代表者名義で登記されていた不動産について、その代表者が死亡したことにより相続登記がされている場合において、当該社団の新代表者名義にするには、相続登記を抹消し、「委任の終了」を登記原因として、所有権移転登記をする(登記研究518号116頁、550号181頁)。
構成員全員の名義で登記されている法人格のない社団の所有する不動産について、新たに選任された同社団の代表者名義に所有権移転登記をする場合の登記原因は、「委任の終了」とする(登記研究539号153頁)。

違法高利業者(違法高金利業者) 貸金業登録をせず、あるいは、違法に高金利で貸し付けを行う金融業者。一般に「ヤミ金融」と呼ばれる。10日で1割(トイチ)、10日で5割(トゴ)、それ以上の高利もある。「トイチ」は、貸金業の登録番号「東京都知事(1)第○○○○○号」の「東京都知事(1)」の意味であることもある。違法高利業者のする貸付は、公序良俗に反し無効であるので、借主は何ら支払う義務を有せず、又、受領した元本は、不法原因給付として、返還することを要しないとされ、平成20年6月10日に最高裁判決も出ている。(→ヤミ金融対策法)(→消費者金融)(→ノンバンク

違法性阻却事由 (1)民法上、不法行為成立の要件を満たすが、特別の事情により、違法性が無いとされる事由。民法では、「正当防衛」及び「緊急避難」が規定されているほか(民法720条)、「正当行為」「被害者の同意(承諾)」「自力救済(自救行為)」が認められている。
(2)刑法上、犯罪構成要件に該当する行為について、特別の事情により、違法性が無いとされる事由。刑法では、「正当行為」「正当防衛」「緊急避難」が規定されている(刑法35条〜37条)。

井溝(いみぞ)(→井溝(せいこう))

違約手付 手付を交付した者の契約違反があった際に、手付の交付を受けた者が違約金として取得することができる手付。(→解約手付)(→証約手付)(→成約手付

入会権(いりあいけん) 慣習・規約に基づき、採草や放牧、狩猟のために山林や原野、河川などを利用する権利。民法上、共有の性質を有する入会権については、共有に関する規定が‘適用’され(民法263条)、共有の性質を有しない入会権については、地役権に関する規定が‘準用’される(民法294条)とあるが、どちらも、まず、慣習に従うものとされており、実際に民法の規定が適用ないし準用される余地はほとんどない。。

遺留分(いりゅうぶん) 相続に際して、兄弟姉妹以外の相続人が取得することを法律上保証した相続財産の割合。遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に、一定範囲の贈与財産の価額を加えた額から、債務の全額を控除した額を算定の基礎とし、直系尊属のみが相続人である場合はその3分の1、それ以外の場合は2分の1の割合とされている。被相続人がなした遺留分に反した処分行為は、当然に無効となることはなく、遺留分権利者及びその承継人が減殺請求をすることができるにとどまる。

遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん) 遺留分を有する者(遺留分権利者)及びその承継人が、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び一定の範囲の生前贈与の効力を否定して目的物の返還を請求(未給付の財産についてはその引渡しの拒否を)する権利。この請求権の行使は、相手方に対して意思表示することで足り、裁判上で行使することを要しないが、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年、又は、相続開始の時から10年を経過したときは行使することができない。一般的に「遺留分減殺請求(権)」と表現されるが、遺留分を減殺するわけではない。

医療法人 医療法(昭和23年7月30日法律第205号)の規定に基づき法人とした、病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団(医療法人社団)又は財団(医療法人財団)(医療法39条)。医療法人でない者は、その名称中に「医療法人」の文字を使用してはならないが、医療法人は、その名称中に使用する文字についての制限はなく、「医療法人」の文字を使用しなくても良い(医療法40条)。医療法人を設立するには、都道府県知事の認可を受けることを要し、定款又は、寄附行為をもって、次の事項を定めなければならない(医療法44条1項、2項)
1.目的
2.名称
3.病院、診療所又は介護老人保健施設の名称及び開設場所
4.事務所の所在地
5.資産及び会計に関する規定
6.役員に関する規定
7.社団たる医療法人にあつては、社員総会及び社員たる資格の得喪に関する規定
8.財団たる医療法人にあつては、評議員会及び評議員に関する規定
9.解散に関する規定
10.定款又は寄附行為の変更に関する規定
11.公告の方法
医療法人は、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることにより成立する(医療法46条)。医療法人は、剰余金の配当をしてはならない(医療法54条)。

医療法人財団 病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする財団で、医療法の規定に基づき法人としたもの(医療法39条)。医療法人財団を設立しようとするものは、「寄附行為」をもって、目的、名称、病院の名称及び開設場所、事務所の所在地、資産及び会計に関する規定、役員に関する規定等の他、評議員会及び評議員に関する規定を定めなければならない(医療法44条2項)。社員が存在しないので、社員総会や社員に関する規定を置くことはできず、出資持分や払い戻しの概念も無い。

医療法人社団 病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団で、医療法の規定に基づき法人としたもの(医療法39条)。医療法人社団を設立しようとするものは、「定款」をもって、目的、名称、病院の名称及び開設場所、事務所の所在地、資産及び会計に関する規定、役員に関する規定等の他、社員総会及び社員たる資格の得喪に関する規定を定めなければならない(医療法44条2項)。出資者は社員となるが、出資をしていないものも社員になることが出来る。持分の定めがあれば、社員は退社や解散時には払い戻しを受けることができる。

因果関係 原因となる行為・事実と結果となる事実との関係。又は、先に起こった事実と、後に起こった事実が、原因と結果の関係にあること。民法においては、不法行為の成立の要件となり、刑法においては、犯罪成立の要件となる。民法上のものと刑法上のものは、必ずしも同一ではなく、自然科学的なものとも同一ではない。
人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律」(昭和45年12月25日法律第142号)では、因果関係についての推定規定を設け、事業活動に伴い、人の健康を害する物質を排出した者がある場合において、一定の地域内に同種の物質による公衆の生命又は身体の危険が生じているときは、その危険は、その者の排出した物質によつて生じたものと推定する、としている(同法5条)。(→相当因果関係説

インサイダー取引 上場会社の役員、使用人、当該会社と契約をしている者など、会社と一定の関係にある者や公開買付者等関係者が、当該会社の株価に影響のある情報を知り、その情報の公表前に当該会社の有価証券等に係る売買等を行うこと。インサイダー取引は禁止され、この規定に違反したものは、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処せられ、又はこれを併科される(金融商品取引法(昭和23年4月13日法律第215号)166条、167条、197条の2、13号))。内部者取引。

印紙税

印紙犯罪処罰法 明治42年4月28日法律第39号。印紙に関する罰則は、印紙税法にも規定があるが、収入印紙の再使用が禁止されるのは、この法律が根拠。

姻族 自己の配偶者の血族及び自己の血族の配偶者。三親等以内の姻族は親族となる。

インターネットエクスプローラー (→Internet Explorer

インターネット公告 (→電子公告

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